『新建設業を考える』をテーマとして考え続けます。
2009年

3.1 組織

(1)議事機関
議事機関は,議会と長を独立対等なものとして位置付ける二元代表制であり,住民を代表してその地方自治体の意思を決定する.議員は,一般選挙により住民より選出される.(図3-1地方自治体の組織図)議員の任期は,4年である.そのために,議会の意思決定は,法的に住民全体としての意思とみなされる.執行機関に対するチェックする機能があり,長,その他の執行機関を相互に要請均衡しながら地方行政の運営にあたる.地方分権が進むことによって地方自治体の自主性や主体性が高まるに伴って住民の代表機関として,意思決定機関と執行機関をチェックする機構をもつ議会が果たすべき役割が大きくなる.
行政機構として常任委員会,特別委員会,議会運営委員会がある.議会の内部的な呼び審査機関である.また,議会の内部において議員で組織する議員の団体で会派があり,調査研究活動に対して政務調査費を交付する.
議会の権限として,議決権,選挙権,監視権,意見表明権,自立権がある.監視権は特に執行機関の行う行政執行について監視,けん制をする.検査権,監査請求権,調査権,同意権,不信任議決権がある.また,自立権は,議案の審査を行い,専門家の意見や公聴会や参考制度がある.そのほかに議案の審査の調査のために専門的事項にかかわる調査を学識経験者にさせることができる.
議会は,定例会を1年に4回開催される.(2004年改正により年4回という制限がなくなった)他に必要がある場合に臨時会の開催も行われる.
 
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図3-1 地方自治体の組織

(2)執行機関
  執行機関は,首長制であり,長と行政委員会型の委員会および委員によって構成されている.長は,住民によって直接選挙で選ばれる.(図3-1地方自治体の組織図)また,権力分立のために長から独立した委員会および委員をおく.長は,執行権の長として地方公共団体の代表として広範囲な権限を持っている.そのために,執行機関の権力分立を徹底するために議会や住民による監視が必要となってくる.また長は,事務を管理執行する.
 行政の適法性・妥当性の確保のために監査委員を置く.財務に関する事務の執行,事務の管理,事務の執行,出納などを監査する.一般監査と特別監査があり,一般監査は,地方公共団体の事務全般,財務に関する事務の執行,経営に関する事業の管理が対象となる.毎会計年度少なくとも1回以上行う.特別監査には,他の機関からの要求があった場合に行う監査である.議会,長,からの要求があった場合や住民監査請求がある.

(3)財務
 
 地方自治体に対して憲法94条で自主財政権を保障している.自主財政権は,自治権に基づいて必要な財源を調達し,かつ,これを管理する機能のことをいう.地方自治体の財務は,自主財政権に基づいて,予算,収入,支出,決算,財産等にかんする事務および,事務を管理.執行する作用のことをいう.会計年度は,毎月4月1日より始まり翌年3月31日を事業年度とする.会計方式は,現金主義で会計年度は,独立の原則がある.地方自治体の会計は,一般会計と特別会計がある.特別会計には,特定の事業を行う場合として水道工事業,工業用水道事業,交通事業,病院事業,宅地造成事業,公共下水道事業などがある.一般会計は,特別会計以外のものすべてをいう.

(4)問題点 
 行政の組織は,住民の代表の長と議会によって運営されている.住民は,長,議員に対して解職請求ができ,議会に対しては解散請求が出来る立場にある.しかし,政策のための正当な事業が行われているかは,執行機関にゆだねられている.裏金つくりや不要な経費の使用などさまざまな問題が取りざたされており,執行機関の不正に対しては,住民にとって不透明である.
 長は,幅広い権限をもつ事務を執行するために補助機関が設けられる.副市町村長,会計管理者,出納員などの会計職員,職員,専門委員がある.なかでも行政の意思決定に影響する副市町村長は,長の支えるトップマネジメントを行う.

行政のチェック機能

図3-2 行政のチェック機能

 意思伝達命令は,トップダウン形式となる.そのために長であるトップの意思で決定する議案が重要になる.意思を決定するための補助機関の役割は,重要な役割となる.現状では,補助機関が十分な機能を果たしているかが住民から見えない.そして,その議案を審査する行為は,住民の代表の議員から構成されている議会で行われる.議会の役目は,議案を審議するのが目的であるが,その審議のために,政務調査や有識者による委員会がどのような内容で判断されているかが不明瞭である.また,議決された議案が執行された場合の執行機関の監査に対しては,事後の監査であり議案に対する事業が行使された時点では,立案,計画,実施のどの工程の段階まで差し戻すのか判断がつかない.このように,政策に対する3箇所においてのチェックポイントがある.1つ目は,長の意思決定時.2つ目は,議会の審議時.3つ目は,事業の執行時である.各段階における判断は,住民にわかりやすく説明する必要がある.問題が出てから事後処理するのでなく,問題が出ないようにすることが重要で現在のシステムの強化を行うか,新たな考えが必要となってくる.たとえば,高速道路のフィージビリスタディに関する研究(草柳俊二教授:委員長)においてのプロフェッショナル集団(コンサルティングエンジニア)を活用するシステムの構築などが考えられる.この集団の活用は,長の意思決定,議会の審議,事業の執行時において,効率性,透明性,住民説明責任機能の向上のために有効な役割をはたすと考えられる.

参考文献〔第3章〕

(3-1) 今井 照著 地方自治のしくみ(第2次改訂版)学陽書房
(3-2) 川﨑政司著 地方自治法基本解説(第2版) 法学書院
  (3-3) 草柳俊二教授 文責 高速道路のフィージビリティスタディーに関する研究 〈高速道路整備プロセスの改善に向けて〉